元来の「淇洲」と同じく双玉仕立てに作る。下の赤囲みの駒は、実際に升田愛用の赤柾の「淇洲」(カラーコピー)。こちらは双玉ではない。

淇洲書島黄楊赤目柾盛り上げ駒/第241作(塩井一仁氏所蔵)

※この駒木地を見たときに、どうしても作りたくなった書体がある。それは別項「書体への誘い・淇洲」の中で書いた「天才は天才を知る」で紹介している宮松影水作の「淇洲」(左下段のカラーコピー参照)である。
 詳しくはその別項をご覧いただくこととして、この「淇洲」は、今は亡き将棋界の鬼才・升田幸三実力制四代名人愛用の、その「淇洲」の駒をもとに作ったのである。
 その駒は升田自身が駒箱に赤柾としたためていたが、実際に拝見したかぎりでは通常の赤柾というより、やや赤目が強調された柾目に思えた。大ぶりで駒字とのバランスがよく、当然なことに升田がよく指して使っていたからか、私が好きな「使われてこそ名駒」そのものの駒であった。
 いつかはこのような駒を作ってみようと思っていたところ、赤目の柾が印象に残る、この大ぶりな駒木地を入手したので、今回の「淇洲」を作ったのだ。そこで、「赤目柾」と名づけてみたというわけである。
 私の場合、このように特徴がある駒木地にめぐり合ったとき、作りたくなる書体が浮かんでくることがよくある。これは、駒師特有の楽しみなのだろう。